
3.3.2.2 GPSと電離層遅延
(1)まえがき
大気を有する惑星/衛星では、太陽から放射される紫外線や軟X線を吸収し、大気が電離するため、いわゆる“電離層”が存在する。地上の短波帯等の通信では、電離層での反射を利用して見通し外の遠距離通信を可能にするという利点を持つが、GPSに限らず、VLBI等の電離層の外の基準点からの電波信号を用いて地上の位置決めをする宇宙測地技術では、電離層は誤差要因の最大のものの1つである。
本資料では、GPS測位の誤差要因としての電離層とその変動、日本国内での電離層全電子数実測結果、補正の方法などに関して概要を紹介する。
(2)電離層とその変動
電離層は、地上高100km経度から1,000km程度にわたって位置しており、その状態は、時間的には、
?太陽活動(長期的には約11年周期;短期的には非常に短時間に変動)
?年周期(1年周期と季節変動)
?日周変動
地理的には、
?緯度、地磁気緯度
?経度
等により、複雑に変化する。
電離層の量的表し方としては、単位体積あたりの電子の数(電子密度:ne)や衛星や電波星方向へ積分した全電子数(Total Electron Contents:Ne)を用いて表され、図3.3.2.2−1に高さ方向の電子密度の分布の例を示す。
図3.3.2.2−1 電離層電子密度の高さ方向の分布例

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